時代は19世紀に入り、産業革命が成功を収め、機械文明が急速に進んでいきます。都市には人口が集中し、強大な建造物が建設されました。
そして、写真機や電信機、電話器、大量印刷機、ガソリンエンジン自動車、発電機等の画期的な発明が次々に実用化されていった時代でした。現代文明の基礎が築かれた時代とも言えます。しかし、月へ向かう宇宙船(ロケット)などは、まだ誰も想像した事すらありませんでした。
1865年、ジュール・ヴェルヌの小説『月世界旅行』が発表され、熱狂的に迎えられました。
一連のSF作品を書くにあたり、ヴェルヌは常に当時の最新の科学知識を動員したといわれます。地理学・知質学・生物学・物理学・化学・天文学など、あらゆるジャンルの近代科学の最高のエッセンスが常にヴェルヌの作品には盛り込まれていて、それが人気の元になっていたのですが、この『月世界旅行』は、当時の青少年たちに多大なる影響とインスピレーションを与えました。
ロケットという新しい技術開発に、具体的な夢を与えてくれたからです。ロケットで宇宙旅行する…ロケットで月へ行く…そんな新しい夢を、SF小説という極めて解りやすい形で人々に示したわけですから。そして、彼らの中から宇宙開発のパイオニアたちが育ってゆきました。
月に人類が降り立つ100年以上前に、その当時の最新科学知識と情報、優れた想像力でもって『月世界旅行』を書いた作家、ジュール・ヴェルヌ。作品は他にも、『海底2万マイル』『80日間世界一周』『地底探検』など多数あります。どの作品も、当時の人類が到達し得ない未知の世界をいきいきと描き出した傑作で、今なお読まれ続けています。